スターダンサーズ・バレエ団公演

ソネット代表の高谷大一です。久しぶりに投稿します。

 3月30日池袋の東京芸術劇場にてスターダンサーズ・バレエ団の公演を観てきました。
演目はジュージ・バランシンの「ウエスタン・シンフォニー」とクルト・ヨースの「緑のテーブル」です。
「緑のテーブル」は40年前、私がスターダンサーズ・バレエ団にてプロダンサーとして初めて出演した作品なので、特に感慨深い作品です。心を弾ませて劇場に向かいました。

 東京芸術劇場プレイハウスはシックで落ち着いた雰囲気で、作品に集中して鑑賞出来る環境になっていました。

▪️1部「ウエスタン・シンフォニー」


 ハーシー・ケイの軽快な音楽にのせた明るく楽しい作品でした。
バランシンは特に群舞の構成が巧みな振付家として有名です。「セレナード」「コンチェルト・バロッコ」などが私の印象に残っています。
「ウエスタン・シンフォニー」はストーリーは特になく、4楽章に分かれた各パートにソリスト男女各1名と群舞数名で構成されています。
どの楽章もアイデアに溢れ、それぞれに見せ場がありました。ダンサーも明るく楽しそうに、またしっかりした技術で振付をこなしていて、良質なエンターテイメント作品に仕上がっていました。アメリカで上演する時はおそらく会場は大歓声で、大いに盛り上がった事だと思います。
 ソネット講師の高谷遼は4楽章のソリストとして出演しました。お芝居っ気たっぷりに踊り、作品の成功に貢献していました。
 バランシンはロシア出身の振付家ですが、おそらくこんな自由で明るく楽しい作品を創作したくてアメリカに来たんだろうな、と想像される作品でした。余談ですがミュージカル映画の名作「ウエスト・サイド・ストーリー」振付・脚本のジェローム・ロビンスは ABTに移籍する前はNYCBにいるバランシンの元で助手として勉強したそうです。バランシンがアメリカに来なければ、「ウエスト・サイド・ストーリー」は生まれなかったかもしれません。

▪️2部「緑のテーブル」


「ウエスタン・シンフォニー」と違ってとてもテーマ性の高い作品です。反戦がテーマです。
死神を中心にした様々な死をオムニバスで描いています。舞踊的にいうとロンド形式という手法を取っています。ロンド形式というのは、A:B A:C A:D A:E A:F・・・・とAを中心にB以降別シーンが展開して行きます。
 「緑のテーブル」の場合死神がAになります。以降様々なシーンのラストに死神が現れ各登場人物を死に導いて行きます。
戦争に参加した兵士であったり、婚約者を戦争に送り出した若い娘であったり、娘の旦那さんを戦争に送り出した老婆であったり、レジスタンスの娘であったり、また戦争で利益を得る商人であったり、全ての人が死神に導かれてしまいます。この事によって戦争の悲惨さ、バカバカしさを痛烈に表現しています。
 各シーンのラストに登場する死神が、時には観客の心の隙間を突くような、また時には感情を揺さぶるような、時には不思議な事ですが死に必然性を感じるような様々な手法で演出されています。
 特に印象に残るのがプロローグとエピローグの会議のシーンです。仮面を付けた10人の紳士ですが、それは政治家であったり、学者であったり、富豪であったりします。その会議の様子が軽妙なタンゴで滑稽に描かれています。この会議に参加する人たちの発言に意味は無いし、意味のある事は発言はしません。この滑稽な会議のシーンと死神にまつわるシーンの対比が圧倒的に反戦のメッセージを観客に送ります。やはり舞踊界の歴史に残る名作である事は間違いありません。
 高谷遼講師は戦争利得者にキャスティングされていました。技術的にも内容的に難しい役でしたが、役柄がよく伝わる好演でした。

余談パート2、前回のソネットの発表会にゲスト出演してくださった加地暢文さんが、私が40年前に踊ったポジションを踊っていました。ちょっと運命を感じました。


 今回の公演は3月31日で終わりますが、再演される機会があれば是非ご鑑賞をお勧めします。私ももう一度観たい作品です。

 最後の感想として、私はこのバレエ団で修行し在籍できた事を嬉しく思いました。